みなさまこんにちは。ダンナです。
今回も、前回の記事に引き続きCVPの解説を行います。前回で、一旦、基本的な本試験の問題ができるようになったと思います。今回は、やや応用的な話である営業レバレッジを扱った後、最後にCVPの公式集を掲載します。
前回の復習~記憶に値する式たち(基本式、定義式、そして公式)~
$$売上高=販売単価×数量…①$$
$$総費用=固定費+変動費単価×数量…②$$
$$(営業)利益=売上高-総費用…③$$
$$変動費率 \equiv \frac{変動費}{売上高}…④$$
$$損益分岐点売上高 = \frac{固定費}{1-変動費率} …⑤$$
$$目標利益達成に必要な売上高 = \frac{固定費+目標利益}{1-変動費率} …⑥$$
$$損益分岐点比率(%) \equiv \frac{損益分岐点売上高}{売上高} …⑦$$
$$安全余裕率(%) \equiv 100% -損益分岐点比率(%) …⑧$$
上記8本の式はサラサラと書き下せるようにしておいてください!
限界利益
営業レバレッジに進む前に、ひとつ覚えるべき用語を追加します。それは限界利益です。
$$限界利益 \equiv 売上高-変動費 ( = 固定費+利益)…⑨$$
- 営業利益が仮に赤字であっても、限界利益がプラスであれば、販売数量を増やすことで、営業利益を増やすことができます。
- 逆に、限界利益がマイナスであれば、売れば売るほど、赤字幅が拡大するので、そんな事業は止めましょう!と判断することになります。
営業レバレッジ
さて、いよいよ営業レバレッジです。まずは定義式の確認です。
$$営業レバレッジ \equiv \frac{営業利益変化率}{売上高変化率} = \frac{\frac{営業利益変化}{営業利益(変化前)}}{\frac{売上高変化}{売上高(変化前)}}…⑩’$$
よくわかんない式だと思われたかもしれませんが、すごく平たく言うと、「この会社って売上高が変わったときに、どれぐらい営業利益が変わる会社なんだっけ?」って言ってます。例えば、営業レバレッジが0.5という会社であれば、売上高が10%増えた際には、営業利益は、\(0.5×+10\%=+5\%\)となるので、\(5 \%\)増加することになります。
この営業レバレッジは、会社によって異なります。より正確に言えば、会社の費用構造(固定費の水準や変動費率等)で決まります。やや複雑ですが、以下で見ていきましょう。なお、算数が苦手な方は、導出は読み飛ばして頂いて構いません!
$$営業レバレッジ \equiv \frac{営業利益変化率}{売上高変化率} = \frac{\frac{営業利益変化}{営業利益(変化前)}}{\frac{売上高変化}{売上高(変化前)}} = \frac{営業利益変化}{売上高変化}\times \frac{売上高(変化前)}{営業利益(変化前)}…\rm{A}$$
ここで、固定費は不変なので、
$$営業利益変化 = 売上高変化 – 変動費変化 – 固定費変化 = 売上高変化 – 変動費変化 = 売上高変化\left(1-\frac{変動費変化}{売上高変化}\right)…\rm{B}$$
が得られます。BをAに代入して整理すると、次式のようになります。
$$営業レバレッジ \equiv \frac{営業利益変化率}{売上高変化率} = \left(1-\frac{変動費変化}{売上高変化}\right)\times \frac{売上高(変化前)}{営業利益(変化前)}…\rm{C}$$
ここで、(何らかの施策等の)変化の前後で、変動費率が一定であると仮定すると、
$$\left(1-\frac{変動費変化}{売上高変化}\right) = \left(1-\frac{変動費}{売上高}\right)=(1-変動費率)…\rm{D}$$
と変形できます。DをCに代入すると、
$$営業レバレッジ \equiv \frac{営業利益変化率}{売上高変化率} = (1-変動費率)\times \frac{売上高(変化前)}{営業利益(変化前)}=\frac{限界利益(変化前)}{営業利益(変化前)}…\rm{E}$$
が得られます。(変化前)というワードを省略すると、文献に登場する以下の公式が導かれます。
$$営業レバレッジ \equiv \frac{営業利益変化率}{売上高変化率} = \frac{限界利益}{営業利益}=1+\frac{固定費}{営業利益}…⑩$$
導出がややめんどくさいので、公式⑩は丸暗記することにしましょう!
営業レバレッジの解釈
やっと、営業レバレッジと企業の費用構造とが接続されました。
折角なので、もう少し深堀してみましょう。以下では、営業レバレッジが高いH社と営業レバレッジが低いL社の2社を仮想的に考えます。
公式⑩によると、営業レバレッジは、固定費と営業利益の2つから決まることがわかります。今、H社とL社は、①売上高の水準は同一、②営業利益の水準も同一、③費用構造のみが異なる、と仮定します。したがって、以下の図のようになります。すなわち、H社もL社も総費用は同一の点Pを通るものの、H社の方が固定費が高くなる一方、L社の方が固定費が低くなることがわかります。また、総費用の傾きである変動費単価に注目すると、H社の方が変動費単価が低くなる一方、L社の方が変動費単価が高くなることも見てとれます。
- 営業レバレッジが高い企業⇒固定費が高く、変動費単価が低い
- 営業レバレッジが低い企業⇒固定費が低く、変動費単価が高い
この事実を少し言い換えると、
- 好景気のとき、営業レバレッジが高い(低い)企業は、変動費単価が低い(高い)ため、利益が増幅(減衰)
- 不景気のとき、営業レバレッジが高い(低い)企業は、固定費が高い(低い)ため、損失が増幅(減衰)
ということになります。
数値例
念のため、実際に仮想的なP/Lでも確認してみましょう。なお、現状のP/Lについては、前回の記事と類似の数値を採用しています。
(単位:百万円) | 1. 現状 | 2. 好景気(売上高:+50%) | 3. 不景気(売上高:▲50%) |
売上高 | 2,000 | 3,000 | 1,000 |
変動費 | 500 | 750 | 250 |
固定費 | 1,000 | 1,000 | 1,000 |
営業利益 | 500 | 1,250 | ▲250 |
営業レバレッジ | 3 |
(単位:百万円) | 1. 現状 | 2. 好景気(売上高:+50%) | 3. 不景気(売上高:▲50%) |
売上高 | 2,000 | 3,000 | 1,000 |
変動費 | 1,000 | 1,500 | 500 |
固定費 | 500 | 500 | 500 |
営業利益 | 500 | 1,000 | 0 |
営業レバレッジ | 2 |
これだけしっかりやれば、営業レバレッジはもう大丈夫!
CVPの覚えるべき数式10選
記事の最後に、CVPの問題を解くうえで覚えるべき数式10本をまとめておきました。しっかり頭に叩き込んでください!
$$売上高=販売単価×数量…①$$
$$総費用=固定費+変動費単価×数量…②$$
$$(営業)利益=売上高-総費用…③$$
$$変動費率 \equiv \frac{変動費}{売上高}…④$$
$$損益分岐点売上高 = \frac{固定費}{1-変動費率} …⑤$$
$$目標利益達成に必要な売上高 = \frac{固定費+目標利益}{1-変動費率} …⑥$$
$$損益分岐点比率(%) \equiv \frac{損益分岐点売上高}{売上高} …⑦$$
$$安全余裕率(%) \equiv 100% -損益分岐点比率(%) …⑧$$
$$限界利益 \equiv 売上高-変動費 ( = 固定費+利益)…⑨$$
$$営業レバレッジ \equiv \frac{営業利益変化率}{売上高変化率} = \frac{限界利益}{営業利益}=1+\frac{固定費}{営業利益}…⑩$$
事例Ⅳ CVP徹底攻略 その3:応用編+公式集まとめ
- 限界利益がプラス(マイナス)であれば、販売数量を増やす(減らす)べし。
- 営業レバレッジは、企業の利益構造で決まる。
- 具体的には、営業レバレッジが高い(低い)企業⇒固定費が高く(低く)、変動費単価が低い(高い)。
- 好景気のとき、営業レバレッジが高い(低い)企業は、変動費単価が低い(高い)ため、利益が増幅(減衰)
- 不景気のとき、営業レバレッジが高い(低い)企業は、固定費が高い(低い)ため、損失が増幅(減衰)
これまでの3つの記事でCVPはかなり理解できたと思います。あとは、ひたすら過去問演習を行えばOKです(^^)/
これからもどうぞよろしくお願いします!