みなさまこんにちは。ダンナです。
難しかった、令和4年度 事例Ⅳ・・・
今年(令和4年度)の事例Ⅳは激ムズでしたね…
Twitterで本年の受験者84名に来年の事例Ⅳの難度について予想してもらうと、以下の結果でした。
多くの方が「今後も冬の時代が続く」と予想されているようです。因みに、私自身も、協会から「事例Ⅳで受からせねーよ」的な強いメッセージを受け取ったつもりなので、この結果はかなり納得しております。
さて、それでは、来年度以降の受験者の事例Ⅳ最適戦略(素点目標)はどういったものになるでしょうか?これも、Twitterで本年の受験者98名にアンケートを取ってみました。結果は以下の通りです。
うん。めっちゃわかります!www
私は事例Ⅳは職歴的に得意にしております。
この記事(3部作の見込み)は、難化した事例Ⅳで足切りを何とか食らわないようにしたいという、善良な市民に向けたものです。
難化した事例Ⅳ 対策は?
(私含め)善良な市民は、ひとまず「全知全ノウ」をやってみて、慣れてきたら過去問をタテ解きするかと思います。
基本的には、その方針で正しいと思います。ただ、難化した試験で確実に得点したい場合には、それだけだと若干心配です。それでは、どこを重点的に学習すべきでしょうか?
答えは、CVPです!
なぜなら、経営分析はみんなできる(令和4年度除く)、NPVはみんなできないからです。そう、天下分け目のCVPなのです!
ただ、それにしても令和4年度のCVPはさすがに変わり種でした。来年同じ類の問題を出すとは正直考えられません。本記事は、来年以降、現実的に出題されそうなCVPに対応できる解説記事にしたいのですが、そう考えると令和4年度は本論から外れてしまうんです。
そういうわけで、令和4年度の変わり種CVPについては、本記事では対象外としています。どうしても、対策したい方は、こちらの本をポチって見てください。本試験にかなり類似した問題が掲載されていたとのことです(ソース:ろろのあ)。(2022年11月20日時点、2018年改訂版が最新です。)
因みに、NPV等については、将来的に有償ツールとして販売を検討しています。本記事を読んで関心を持って頂けた方は、ぜひご検討頂けると幸いです。なお、NPVの超絶わかりやすいブログはこちら!(受験後に存在に気付いた私は本当に死にたい…)
それでは、早速本題に入りましょう!
CVPって何?
CVP分析(Cost Volume Profit analysis)は、「数量と費用の関係式から、利益を検討しようぜっていう分析手法」です。諸々の文献を読む限り、意外と数量(Volume)が軽視されてる印象を受けますが、実は数量ってめちゃめちゃ重要です。
基本式は、以下の3本です。1次試験を突破した皆さんなら余裕だと思いますが、まずは3本しっかりと脳内に叩き込んでください!
$$売上高=販売単価×数量…①$$
$$総費用=固定費+変動費単価×数量…②$$
$$利益=売上高-総費用…③$$
①と②には、共通して数量が入っていますよね?
そう、つまりCVPにおいては、主役は数量なのです!
数量が決まることで、①から売上高が、②から総費用が定まり、③を通じて利益が求まる。
これが(あまり語られてませんが)、CVP分析における数学上の構造です。
この数量は独立変数、売上高や費用を従属変数と呼びます。もっと中学生的に言うと、数量が\(x\)で、売上高や総費用が\(y\)です。なお、老婆心ながら、\(変動費=変動費単価×数量\)であることも忘れずに。
CVPって中2っす。
折角なので、\(x\)と\(y\)を使って基本式①と②を書き直してみましょう。
$$y=販売単価×x…①’$$
$$y=固定費+変動費単価×x…②’$$
こう書き直すと、見えてくる人も多いのではないでしょうか?そう、これは(大)昔中学(正確には中2)で習った由緒正しき1次関数です。1次関数が怪しい人は、こちらの記事で復習したうえで、先に進んでください!
販売単価、変動費単価、固定費については、中学では、任意定数であると学習したかと思いますが、本記事ではパラメタと呼ぶことにします。
なぜなら、実際の本試験では、何らかの施策を行い、販売単価、変動費単価、固定費を変化させるとどうなるかという設問が多く、任意定数と呼ぶと混乱を招きかねないからです。「パラメタって何?」って気になった人は、とりあえず気にせず先に進んでください(パラメタの正確な説明って、実は、結構ムズイです…)。
さて、1次関数は直線なので、横軸(\(x\))を数量、縦軸(\(y\))を売上高、総費用とすると、以下のグラフが書けるはずです。ここでは、通常の設定(\(販売単価>変動費単価\)かつ\(固定費>0\))を考えておりますので、必ず2直線の交点が存在することに注意してください。
また、図形的に、販売単価(売上高の傾き)、変動費単価(総費用の傾き)、固定費(総費用の\(y\)切片)が何に対応しているかもしっかり押さえておきましょう!(次回の運用編で重要になります)。
損益分岐点って交点っす。
上のグラフから
- 数量が大きいところでは、売上高が総費用よりも上に存在⇒③式から利益が出る
- 数量が小さいところでは、売上高が総費用よりも下に存在⇒③式から損失が出る
- ある数量では、売上高と総費用が完全に一致(2直線が交わる)⇒③式から損益はゼロとなる
が簡単に読み取れますね。特に、3.のケースにおける交点の\(x\)座標を損益分岐点販売数量、\(y\)座標を損益分岐点売上高と呼びます(理由は損益がゼロになる点だから)。とりあえず、求めてみましょう!
$$y=販売単価×x…①’$$
$$y=固定費+変動費単価×x…②’$$
の交点の\(x\)座標は、
$$販売単価×x = 固定費+変動費単価×x \Rightarrow x = \frac{固定費}{販売単価-変動費単価}$$
で求まりますね。この結果を①’にぶち込むと、
$$y = 販売単価×\frac{固定費}{販売単価-変動費単価} = \frac{固定費}{1-\frac{変動費単価}{販売単価}} = \frac{固定費}{1-\frac{変動費単価 × 数量}{販売単価 × 数量}} = \frac{固定費}{1-\frac{変動費}{売上高}} $$
と変形できますね。変動費率を
$$変動費率 \equiv \frac{変動費}{売上高}…④$$
と定義してあげると、皆さんおなじみの損益分岐点売上高の公式が
$$損益分岐点売上高 = \frac{固定費}{1-変動費率} …⑤$$
と求まりました。定義式④と公式⑤は必ず覚えるようにしてください!
損益分岐点の公式は注意して使ってね!
損益分岐点の公式⑤を使う問題は頻出ですが、以下の点に注意してください。
元々、パラメタは、販売単価、変動費単価、固定費の3種類だったはずなのに、公式⑤では、固定費、変動費率の2種類に減ってしまっている!!
実際には、減ってないですw要は、定義式④を課して、販売単価、変動費単価の2つを変動費率に丸めただけなので…この解釈は、変動費率の変化のさせ方には、販売単価を変化させる方法と変動費単価を変化させる方法の2通りが考えられるよね!って言ってるだけです。ただそれだけ。でも意外と大事!
目標利益?余裕デス。
損益分岐点売上高は損益ゼロとなる売上高を求めているわけですが、「それでは困る」経営者もいるでしょう。たまに、「目標利益XXを達成するために必要な…」みたいな問題も本試験で目にするので、ここで合わせて導いておきましょう。ここまでしっかり理解しているあなたにはおそらく余裕です。
基本式③の利益を目標利益と読み替えると、
$$目標利益=売上高-総費用$$
となるので、この式に基本式①’と②’をぶち込むと
$$目標利益=販売単価×x-固定費+変動費単価×x$$
となるので、\(x\)を求め、①’に代入して\(y\)を求めます(計算は簡単なので省略)。結果は、
$$目標利益達成に必要な売上高 = \frac{固定費+目標利益}{1-変動費率} …⑥$$
となるはずです。覚えやすいので、公式⑤と合わせて覚えておきましょうか。
経常利益ベースの目標利益?全然余裕デス。
上記の公式⑥はより正確にいうと、営業利益ベースの目標利益です。
本試験ではまれに、経常利益ベースの目標利益を問われますが、慌てふためいてはいけません!だって、
$$経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用 \Longleftrightarrow 営業利益 = 経常利益 – 営業外収益 + 営業外費用$$
という式があるので、こいつを公式⑥にぶちこめば
$$目標経常利益達成に必要な売上高 = \frac{固定費+目標経常利益 – 営業外収益 + 営業外費用}{1-変動費率} $$
として求まるはずです。公式って書くほどでもないので式番号は省略します。丸暗記ヨクナイ!
事例Ⅳ CVP徹底攻略 その1:理論編まとめ
- CVPは実は数量が重要
- 真に理解すべきは、公式ではなく3本の基本式!
- わかっていれば、公式は一瞬で導ける(でも覚えといた方が時短)
- 目標利益って実はサービス問題
今回はCVPの理論的側面の解説に努めました。具体的には、基本式3本と定義式1本から、すべてが構築されている(美しい)世界であることを、公式の導出を通じて明らかにしました(したつもりですw)。次回は、「じゃあ、実際のところ、問題ってどう解くのよ?」ってとこに焦点をあてた運用編を執筆予定です。
これからもどうぞよろしくお願いします!